いつも、ゆるり整体整骨院のブログをご覧いただき、ありがとうございます。
鍼灸師・健康運動指導士の黒田です。
今回は、50歳代前後に生じる肩の痛みや、拘縮について触れてみます。
一般に「五十肩」と呼ばれていますが、これは俗称であって病名ではありません。
これには、医学的に原因が明確なものも、そうでないものも含まれていることになり、「五十肩」だと思っていると、診断や治療開始が遅れてしまう可能性があります。
そうならないために、痛みが出たときに、早期診断が必要です。
医学的には、明確な原因がないのに肩の痛みや拘縮が起こるものは、
凍結肩といわれています。
凍結型と間違えられやすい病気には、
腱板断裂
石灰性腱炎
変形性肩関節症
があります。
異常が起こる部位が異なりますが、「肩が痛い」症状だけではどの病気なのかが判断するのが難しく、鑑別には検査が必要です。
今回のブログは「原因がはっきりしていない肩の痛み」である
凍結肩について、
対処の仕方と運動処方
をお話ししていきます。
まず、凍結肩以外の
「原因がはっきりとしている肩の痛み」について簡単に説明します。
- 腱板断裂
状態:上腕骨の骨頭と繋がっている腱板が裂ける。
症状:肩が痛くて腕が上げられない。夜、眠れないほど肩が痛い。
診断:腱板は柔らかい組織なので、エックス線検査では映らないため、超音波検査やMRI検査を行う。
- 石灰性腱炎
状態:腱板に血液中のカルシウムが沈着して炎症が起こる。
症状:肩が痛くて腕が上げられない。夜、眠れないほど肩が痛い。突然、肩に激痛が起こる。
診断:エックス線検査で、カルシウムの沈着を有無を見る。腱板にカルシウムが沈着していると、その部分が白く映る。
- 変形性肩関節症
状態:肩関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかり合って骨が変形している。
症状:肩の痛み、可動域制限。安静時や夜間、動作時痛があり、肩関節だけでなく、頸部や上腕骨の外側にまで痛みの範囲が広がる。
診断:エックス線検査・MRI検査・CT検査
「原因がはっきりしていない肩の痛み」
- 五十肩
状態:肩関節を袋状に包んでいる関節包に炎症が起きている。
症状:肩が痛くて腕が上げられない。夜、眠れないほど肩が痛い。
診断:エックス線検査で、「石灰性腱炎」でないことを確認する。
肩の可動域を確認する。
・屈曲100度未満。
・下垂位外旋10度以下。
・結帯動作が腰のベルトの高さまで上がらない。
では、本題の「凍結肩」について、取り上げていきます。
一般的な誤解、その1「時間がたてば、自然に治る」
A.確かに多くの凍結肩は、時間とともに改善が期待できると報告されてきましたが、最近は、痛みや可動域制限が残るという報告も少なくありません。
一般的な誤解、その2「動かさないと肩が固まってしまうから、積極的に動かしたほうが良い」
A.安静にしたほうが良い時期、動かしたほうが良い時期があり、動かしたほうが良い時期のタイミングを間違えると、悪化させてしまうこともあるので、注意が必要です。
1.進行は3つの時期に分けられます。
「炎症期」
「拘縮期」
「回復期」
それぞれの状態と適切な対処法
炎症期
凍結期には肩の痛みはゆっくり強くなります。
対処法:肩の安静/痛みを和らげる薬(薬物療法を2カ月以上経っても痛みが改善しない場合、他の病気の可能性があるので、注意が必要)
拘縮期
肩の痛みが少し和らいできます。
対処法:運動・ストレッチ(固まっている肩を無理にほぐそうとすると、筋肉や骨に孫訴訟が生じたり、肩関節の炎症が再発することがあるので、注意)/ヒアルロン酸注射
回復期
回復期では肩の動きが少しずつ改善してきます。
2.凍結肩に対する鍼灸治療
炎症期は、夜間の痛みを抑えるために、中枢神経系へのアプローチも考えられますが、基本は安静にしておきます。
慢性期になってくると、肩の痛みは炎症期に比べて軽減しますが、肩周囲の組織が硬くなり、肩の動かしにくさに悩まされる時期でもあります。
肩の可動域制限を取り除くため、肩回りの筋肉の硬化を改善し、柔軟性を取り戻すための鍼治療をします。
手技治療、運動療法を併用していきます。
回復期になってくると、後遺症予防のため、肩関節の周りに鍼治療や手技を行います。
3.関連痛について
肩痛の場合、肩部の痛み以外に関連痛が存在していることが多いので、痛みの部位とその原因になる筋肉を下記にまとめます。
上腕前面:三角筋前部繊維、大胸筋、上腕二頭筋など
上腕後面:三角筋後部繊維、大円筋、上腕三頭筋など
上腕全体:肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小胸筋、広背筋など
4.疼痛誘発動作
また、どの筋肉か特定するために、痛みを誘発売る動作を検査します。
なお、肩関節の可動域を測定する際は、代償運動が起こらないように肩を固定し、最終可動域まで測定を行います。
筋肉と疼痛誘発動作のまとめ
三角筋:肩関節の屈曲・伸展・外転のどれか1方向に痛みがあれば陽性。
広背筋:肩関節の伸展・内転・内旋のいずれかに痛みがあれば陽性。
ただし、内旋運動に関しては補助的な役割が強いので、内旋でのみ痛む場合は、他の内旋筋(肩甲下筋など)を疑う。
大円筋:肩関節の伸展・内転・内旋のいずれかの動作で痛みがあれば陽性。
小円筋:肩関節の外旋・水平外転のいずれかの動作で痛みが出れば陽性。
肩甲下筋:肩関節の内転・内旋・水平内転のいずれかの動作で痛みが出れば陽性。
棘上筋:肩関節の外転動作で痛みが出れば陽性。
棘下筋:肩関節の外旋・水平外転のいずれかの動作で痛みが出れば陽性。
大胸筋:肩関節の内転・屈曲・水平内転のいずれかの動作で痛みを訴えた場合陽性。
小胸筋:上肢帯の引き下げ・外転・下方回旋のいずれかの動作で痛みが出れば陽性。
上腕二頭筋:肩関節の屈曲・内転・外転のいずれかの動作で痛みが出れば陽性。
上腕三頭筋:肩関節の伸展・内転のいずれかの動作で痛みが出れば陽性。
以上、今回は、肩の痛みの分類と、凍結肩についてまとめました。
肩に痛みが出てきたり、可動域制限が出てきたときは、早めに検査や治療を受けましょう。
また、炎症期が過ぎた後からの運動療法は、とても有効です。
予防には、普段から、姿勢に気をつけ、筋力を維持していくことが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。